最近の研究開発の課題と解決策
最近、少し仕事がバタついており、具体的な情報の精査が追いついていません。
今回も抽象的なコラムですが、お許しください。
知人から「研究開発の課題と解決策」を問われたので、少しまとめたいと思います。
私は、アカデミア研究との交流を持ちながら製薬会社に勤務していました。
したがって、アカデミア研究の事業化と製薬会社の研究開発という視点で、「研究開発の課題」をまとめたいと思います。
- 研究開発とは…
- 研究開発の課題と解決法
研究開発とは…
まずは研究開発の定義を決めたいと思います。
ここでいう研究開発は、「事業化を目指す研究開発」にしたいと思います。
研究開発には大きく分けて2つの側面があります。
(ノーベル賞も2つの切り分けを設定しているようです。)
1つ目は、現象の原理原則や真理を追求していくような研究です。
例えば、1つ目は大隈良典先生の「オートファジーの仕組み解明」の研究です。
本研究は、商業化されていませんし、現時点では実質的にヒトの役には立っていませんが、革新的研究ということで、受賞しました。
2つ目は、ヒトが便利に暮らせるような研究(実用化)で、革新的なものです。
例えば、大村智先生の「感染症に対する新たな治療法の発見」のような場合です。
こちらの発見により多くの方が感染症を免れ、命を救われました。
今回の記事では、2つ目の視点、つまり研究開発の実用化・事業化するという側面から見ていきます。
研究開発の課題と解決法
次に研究開発の課題ですが、私は大きく分けて3つあると思います。
- 研究開発を事業へ結びつけるコンセプトの甘さ
- 技術を事業へ結びつけるための人材の不足
- ヒトへの応用のハードルの高さ
研究開発を事業へ結びつけるコンセプトの甘さについて
新たな技術や発見は、研究者の日々の弛まぬ努力によって、研究室で生み出されます。
彼らは熱心で研究能力として、非常に高いものを有しています。
一方で、事業を設計するという側面は弱いです。
事業化することのノウハウに疎いためです。
また、研究者の考える技術価値への見積りと世間が必要とするものが、ずれていることもあります。
解決法は、ビジネス経験のあるヒトを研究後期から参画させることです。
例えば、海外ベンチャー企業は2人1組でビジネス活動をしていることが多いです。
1人は技術に長く携わる研究者、もう1人はビジネスを経験している事業家です。
プレゼンでは、コンセプトの説明を事業家が、技術を研究者が行います。
それに比べ、日本は研究者と事業家の結びつきが弱いように思います。
技術を事業へ結びつけるための人材の不足
次に、新たな技術を事業へ結びつける(評価できる)人間が、バイサイド(投資側)にいるか、という点です。
研究者が事業を始める際、資金が必要です。
その資金は、ベンチャーキャピタルや製薬会社から集めることになります。
ベンチャーキャピタルのことは、私は詳しくないので言及しません。
一方、製薬会社は、技術提携や技術導入の評価者は、企業に所属する研究員です。
彼らも、研究的には優秀ですが、事業化という観点では十分ではありません。
また、彼らは内省技術の方が愛着があるため、「事業として正しい評価」ができないこともあります。
解決策としては、組織内に外部技術の評価に特化した組織を作ることが重要です。
(すでに大手製薬会社は、このような取組を実施しています。)
そして、組織の中に事業化へ理解のある人間を必ず入れるべきです。
仮に独立した組織を作ることが困難なら、事業を取り仕切る部署が、評価の目的・コンセプトを明確に示し、研究者が評価すべきポイントを限定することが重要と考えます。
ヒトへの応用のハードルの高さ
最後に、ヒトへの応用ハードルについてです。
このハードルは、技術面よりも倫理面が課題になるように思います。
例えば、iPS技術が注目される以前の再生医療はES細胞が主流でした。
ES細胞は、倫理面からのヒトの応用をしていくことが困難な技術でした。
(昨今はES細胞のヒトへの応用についての指針があるようです。)
近年であれば、iPSや核酸技術も現時点ではガイドラインがありません。
したがって、リスクを嫌う企業には投資がしにくい環境にあると思います。
このような課題は、官民が綿密にコミュニケーションをとり、早めの指針取り決めを行うことが重要です。
技術は、そこにあるだけでは使えず、使い方は社会が決めていくものです。
技術を社会に還元すること、スケールすることは、世論が握っているとも言えます。
以上です。