緊急事態宣言の延長について
明日、5月4日に
「緊急事態宣言の終了か?延長か?」
が正式に発表されるようです。
数日前の安倍総理の会見から考えると、延長が既定路線ですね。
一方、延長するにしても
「出口戦略が見えない」
という声も聞かれます。
確かに、何が一体どうなったら緊急事態宣言が解除されるのでしょうか。
新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の資料を読みつつ、考察したいと思います。
重視されているデータ
新型コロナウイルス感染症対策専門家会議(以下、専門家会議)が、重要視しているデータはエビデンスのあるデータと考えられます。
その中でも重要なのが、患者数や死亡者数などで先行する海外データ(中韓欧米等)と考えられます。
日本はPCR検査数等の課題がありますが、諸外国に比して患者数や死者数は緩やかです。
その仮説として
- 平時からのうがい、手洗いの励行
- ハグや握手の文化がない
- 衛生環境が整っている(例:土足で家に上がらない)
- 日本語は飛沫を飛ばしにくい
- BCG等の予防接種による免疫機能の強化/変化
等が挙げられています。
しかし、残念ながら、いずれも科学的なエビデンスが(現時点では)ありません。
専門家会議(科学者)としては、エビデンスがない以上、特別に日本人が新型コロナに対して耐性がある、と信じることはできません。
したがって、日本も全国一致で対策を講じなければ、海外と同等に感染が広がりうると考えた、と推測されます。
基本再生産数(R0)と実行再生産数(Rt)
ニュースを見ていると 「基本再生産数」と「実行再生産数」という言葉を耳にします。
再生産数とは、1人の感染患者が新たにウイルスを感染させる人数、を意味します。
そのうち
- 基本再生産数(R0)は、全ての人が感染経験がない状態で、1人の感染患者が新たにウイルスを感染させる人数(デフォルト値)
- 実行再生算数(Rt)は、集団の感染が進んだ状態の任意のタイミングで、1人の感染患者が新たにウイルスを感染させる人数(変動値)
を指します。
そして、以下のように考えます。
- R0 > 1 の場合は感染拡大するウイルス
- R0 < 1 の場合感染拡大しないウイルス
- Rt > 1 の場合は今後もウイルスが感染拡大する状態
- Rt < 1 の場合は今後はウイルスが感染拡大しない状態
専門家会議の考え方
専門家会議は3月19日の提言で、新型コロナの R0を ”2.5” と定義しました。
この数値はドイツの数値を参考にしたようです。
なぜ日本の生データから導き出したR0 ではなく、ドイツのR0 を使用したのでしょうか?
R0はデフォルト値なので、政策介入が行われる以前の数値が必要と思われます。
しかし、日本は外出自粛要請(東京:3/25)や緊急事態宣言の前から自主的な対策が行われていました。
僕の経験では、2月上旬に新型コロナ対策のため会議をキャンセルする会社がありました。
実感として、3月中旬時点で通勤電車の乗客数は、体感で30-40%減でした。
R0 を設定するにあたり、専門家会議は以下のように考えたと推測されます。
- 新型コロナ感染に関して、日本人は特別な耐性はない(諸外国と条件は同等)
- 自主的な対策が始まり、正確なR0が導き出せない
その結果、ドイツの ”R0=2.5” を使用し「重症患者が85万人、42万人が死亡」という発表になったと思われます。
ちなみに、後日のデータ解析で ”R0=2.5”は一定の正しさを反映しているようです。
専門家会議は5月1日にも提言を公表しています。
その中で、
- 東京における3月14日時点のRt を”2.6”
- 全国における3月25日時点のRt を”2.0”
であったことが記載されています。
したがって、自主的な対策がなければ日本のR0は2.5よりも大きかったかもしれません。
これまでの成果
専門家会議は5月1日にも提言では、4月10日時点の
- 東京における Rtを "0.5"
- 全国における Rtを "0.7"
と発表しました。
これは、外出自粛要請などによる一定の成果と考えているようです。
今後、緊急事態宣言後のデータも公表になることと思います。
緊急事態宣言の延長賛成派と反対派の出口戦略
ここからは政策の話であり、多くが推測ですのでご注意ください。
緊急事態宣言の延長の是非について、多くの記事を読みました。
賛成派・反対派のいずれもが、日本を考えており、延長する/しないことで経済的ダメージが小さくなると考えているようです。
なお、専門家会議は5月1日の提言内容から延長賛成であると思われます。
反対派の主張
延長反対派は ”Rt <1”なので、現在は感染が収束するフェーズと考えているようです。
緊急事態宣言の解除後にRt値が上昇し ”Rt >1” になる場合は、改めて緊急事態宣言を発令するというシナリオを描いています。
Rt 値を指標に、経済を回しながら感染爆発や医療資源の枯渇を防ぐ、という考え方です。
その結果として、日本国民の多くが新型コロナの免疫を獲得(集団免疫)し、緊急事態宣言の発令がなくてもRt 値が自然と下がり、終息することを期待しています。
この政策の場合、国民全体および医療機関に、中長期の負荷がかかる、と推測されます。
欧米各国は、このような政策で進めようとしているところが多いと思います。
賛成派の主張
延長賛成派は、1日あたりの新規感染者数を0人近傍にすることを目標にしています。
0人近傍にし、初期に実施していたクラスター潰しに政策転換したいと考えています。
クラスター潰しは国民にも医療機関にも負荷が少ない、と推測されます。
一方で、各人の行動履歴を追えるようにするという国民の協力が必要です。
封じ込めが上手くいっている台湾や中国や韓国などは、このような政策をとっています。
この政策では、携帯電話の位置情報から行動履歴を追い、新規感染者が出た場合、濃厚接触者にあたる人には自主隔離を促すようです。
「監視社会」と危惧する人も多いと思います
専門家会議では、クラスター潰しへの施作が提言されています。
以下は厚労省のウェブサイトで、専門家会議の資料が閲覧できます。
最後に
新型コロナ対策は、どの道を選択しても厳しいものだと思います。
僕も一人の日本国民として頑張っていきたいと思います。