健康を硬派に考える(仮)

薬剤師免許・医学博士号をもち、製薬会社への勤務経験もあるアサカワイッペイが健康に対して、真剣に考えるブログ

大学院進学を考える

 

2019年3月をもって、僕がお世話になった大学院の先生が退官します。

僕は、大学で薬学を勉強し、卒業後、医学部の修士・博士課程に進学しました。

(僕が大学生だった頃、薬学部はまだ4年制でした。)

 

大学院に進学する理由は、様々な理由があると思います。

理由の1つは、箔をつけるための大学院進学です。

学歴ロンダリング」なんていう言葉も流行りました。

又、就職できず、モラトリアム的に大学院へ進学する人もいます。

しかし、ここでは、本気でアカデミア研究者を目指す(した)人について論じます。

アカデミア研究者とは、大学の教授や准教授、助教のことです。

 

大学院進学と研究室(ラボ)選び 

アカデミア研究者を目指す場合、大学院で所属する研究室(ラボ)は非常に大事です。

ラボを選ぶにあたって、大きく分けて2つの軸があります。

  1. ラボの研究テーマ
  2. ラボの大きさ(資金力)

僕は、大学院で免疫学の研究をしたくてラボを選びました。

多くの大学生は、「1. ラボの研究テーマ」を基準に進学先を決めると思います。

僕もそうでした。

ただ、幸運だったのは、所属したラボが「2. 大きいラボ(資金力)」だったことです。

資金力があるということは、教授がその業界(世界)で一流であり、優秀な人材が集まってくるラボということです。

 

「ラボの研究テーマ」か「ラボの大きさ(資金力)」か

自分が興味あるテーマを扱うラボに、必ずしも資金力があるとは限りません。

その場合、どうすれば良いでしょうか?

選択肢としては、

  1. 興味あるテーマをやっている小さい(資金力がない)ラボ
  2. テーマについて興味は薄いが大きい(資金力がある)ラボ

があります。

僕が大学生の頃なら、前者を選ぶと思います。

しかし、今の僕は「2. テーマについて興味は薄いが大きいラボ」をおすすめします。

 

キャリアを見据えた大学院進学

前述の通り、僕はアカデミック系の研究職に就きたいと思っていました。

しかし、大学院で能力的に挫折し、就職して製薬会社の研究職に就きました。

この挫折経験が良かったと心から思っています。

そして、大きいラボに所属したから、味わえた挫折感だと思います。

 

アカデミック系研究者の厳しさ

アカデミック系で仕事をする場合、評価軸のほとんどが研究能力になります。

人脈、政治力も重要ですが、とにかく研究成果がなければ厳しいです。

一方、会社では例え研究能力が高くなくても、書類処理能力やマネジメント能力など、幅広い評価軸があります。

研究で挫折しても得意なものが他にあれば、他部署に異動すれば良いのです。

 

又、アカデミック系の厳しさは、評価軸の少なさ以外に、雇用の安定性と給与ベースの問題があります。

日本人研究者がノーベル賞をとるたび、雇用の不安定さが話題になります。

研究者として明るい道が開けなければ、バイトで食いつなぐことも視野に入れなければなりません。

この状況に精神的プレッシャーを強く感じる人も多いと思います。

 

アカデミック系研究者になった場合のモデルケース

アカデミック系研究者の厳しい状況を理解するには、同じ研究室の5歳上の先輩を見ることが参考になると思います。

前述の通り、僕は大きなラボに所属していたので、優秀な先生や先輩が多くいました。

彼らでさえ、生活の質は高くなく、大変な日々を送っていました。

又、ある時リアルに、僕自身がこの戦場でこのレベルの人達と対等に戦わなければならない、ということに恐怖しました。

 

自分を知ることの大切さ 

今思えば、大学院修了前に自分の能力を見切れたことは良いことでした。

ときどきこの判断を誤る人がいますが、原因の一つは、大学院時代を大きなラボで過ごさなかったからだと思います。

 

これこそが

  • 興味あるテーマをやっている小さい(資金力がない)ラボ」

より

  • 「テーマについて興味は薄いが大きい(資金力がある)ラボ」

に所属する方が良い理由です。

 

大学院生は、ラボ内で研究能力が底辺からのスタートになります。

そして、底辺からどこまでポジションをあげられそうか、を早めに見極めることが大事です。

それが、将来アカデミック系でやっていけるかどうかの判断材料になります。

 

小さなラボでは、少し頑張れば、実力的にラボのトップになることができます。

しかし、「井の中の蛙」になってしまう可能性があります。

そして、博士号取得後に他のラボに移籍し、挫折してしまうことがあります。

アカデミア研究者として働き始めてからの挫折は、けっこう不憫です。

 

興味のある研究テーマは力がついてからやればいい

では、興味あるテーマは、いつ研究したら良いのでしょうか?

大学院修了後、自分で研究費をとれるようになってからで十分です。

つまり、アカデミア研究者として独立した後です。

 

ただ、大学院進学前に興味があったテーマは、大学院修了時には、かなり陳腐なものに写ります。

それは、研究者として成長した証でもあります。

 

ザックリまとめ

以上のことから、僕は大学院時代を大きなラボで過ごすことを推奨します。

もし挫折しても、挫折した自分を認めて、次の目標を掲げ続ければ良いと思います。

むしろ、変な固執から、長い間つらい思いをする方が、人生を無駄にすると思います。

もし大学院進学を迷っている人がいたら、この文章が何かの一助になれば幸いです。

 

 

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