PCR検査への考察
新型コロナウイス感染症の検査方法として一気に有名になったのは、PCRです。
PCRはPolymerase Chain Reactionと言い、研究ではよく用いられる手法です。
PCRで出来ることは、特定のDNA配列の増幅です。
新型コロナウイルス検査の場合は、患者サンプルにおいて、特定のDNA配列が
- 増幅されれば陽性
- 増幅されなければ陰性
と判断されます。
ちなみに、PCRはノーベル賞も受賞しており、発見当時は超画期的な技術でした。
(新型コロナウイルスはRNAウイルスなので、検査の際はPCRの前処理として複数のステップがあります。)
そんなPCR検査は
「検査数を増やすべきか否か」
という論争があります(今はひと段落した?)。
今回は、検査体制ついて書いてみたいと思います。
PCR検査のキャパシティ
ニュースで報じられている通り、日本のPCR検査数は少ないです。
全国データは見つかりませんでしたが、こちらが東京の新型コロナ関連データです。
これを見ると、1日で実施した検査数は最大で1,684件です。
少ないと言わざるを得ません。
恐らく最大で可能な検査数(キャパシティ)が小さいのだと思います。
なぜPCRが普及しないかというと、日本は遺伝子治療や核酸医薬の後進国だからです。
後進国というより必要に迫られていなかった、という方が適切なのかもしれません。
少なくとも医療現場では…
このような状況の中で、突然、検査能力を10倍にしてほしいと言っても無理です。
医療資源のキャパシティ
新型コロナ騒動で最も重要と考えられていることは、医療崩壊を起こさないことです。
PCR検査だけを業務とするのであれば、検査能力を10倍に増やせたかもしれません。
しかし、医療機関には新型コロナウイルス感染症以外の患者さんも当然、来院します。
新型コロナに関する業務は、医療機関からすれば、通常業務に追加された業務なのです。
そんな状況の中に「興味」や「不安」というだけで、PCR検査希望者が訪れたら
- 本当に検査が必要な新型コロナ罹患者が見逃される
- 検査待ちで感染爆発が起こる
- 新型コロナ以外で来院した患者の検査が滞る
ということになると思います。
新型コロナ感染者だけど無症状という方の扱い
検査は症状があり、必要とする人に、適切に提供されるべきです。
これは新型コロナウイルスだけでなく、全ての疾患に共通です。
無症状の方は、通常どおりに生活してもらえば良いです。
検査も必要ありません。
ウイルス感染した場合、体内のウイルス量が一定以上になると症状が現れます。
しかし、感染しても体内でウイルス量が一定量以上になるとは限りません。
又、症状が現れるとも限りません。
いつの間にかウイルスが体内から排除されてしまうこともあります。
PCRは検出感度の高い検査です。
無症状だけどPCR陽性、つまり無症状の新型コロナウイルス患者とされている方は、
「ウイルス量がPCR検査で陽性になる程度の量だけど、症状が出るほどの量はない」
という状態です。
まとめ
5月1日時点の東京都の情報によると、新型コロナウイルスについて
- コールセンターへの相談件数:74,661 件
- 受診相談窓口への相談件数:95,124件
- 検査実施件数:34,628 件
- 検査実施人数:11,691 人
- 陽性患者数:4,317人
となっています。
不安な気持ちはあると思います。
PCR検査が十分にできる状態にないというボトルネックもあります。
感染し、症状がでると死を招きかねない病気でもあります。
一方で、各都道府県は可能な限り体制を敷き、新型コロナ対応を試行錯誤しています。
結果として検査数の4割が陽性という効率の良い仕組みを作れているように思います。
患者の絶対数で見ると、新型コロナ患者はまだまだ少ないという印象を受けます。
(東京都の人口1,395万人に対してという比較において)
楽観はできませんが、悲観しすぎず、生活していきたいと思います。