新型コロナウイルス -人為的か、自然発生か-
新型コロナウイルスが世界的流行を始めた2020年2〜3月、
「新型コロナウイルスは中国が人為的に作ったものだ」
という言説がにわかに広がりました。
米国では、いまだに3分の1の人が中国の陰謀と考えているようです。
また、人為的とは言わないまでも、米国ミズーリ州やイタリアでは、中国を提訴しようという動きがあるようです。
中国は世界中から大きな反感を買ってしまいましたね。
新型コロナウイルスは、ウイルス学的にはSARS-CoV-2と呼称されます。
特徴としては、一本鎖プラス鎖RNAのウイルスです。
詳細は割愛しますが、RNAウイルスは突然変異を起こしやすいとされています。
そんな新型コロナウイルスは、本当に人為的に作製されたものなのでしょうか?
それとも自然発生したものなのでしょうか?
結論としては、科学的には自然発生の確率が高そうです。
人為的とされる根拠
実は、あまり根拠がありません。
僕が調査した限り、明確な根拠が示されている科学論文はありませんでした。
最もらしい言説としては、James Lyons氏の以下の寄稿です。
James氏の寄稿は、進化論視点でRNA配列が不自然という主旨です。
この内容だと、ウイルス学的証拠としては弱く、難癖レベルに感じてしまいます。
また、James氏自身も正式な科学論文には投稿していないようです。
自然発生とされる根拠
James氏に反論する形で、中国の研究機関から文献が出されています。
筆頭著者のPei氏は、Jame氏が指摘したRNA配列はSARS-CoV-2に特異的なものではない、とデータ付きで述べています。
比較対象はコウモリに感染するウイルスです。
目下、攻撃対象となっている中国からの報告のみでは怪しいですが、ギリシアのグループも同様にSARS-CoV-2をコウモリのウイルスと比較し、96.5%の相同性があると述べています。
さらに、Nature Medicineという有名科学雑誌には、米国・イギリス・オーストラリアの著者が共著で、人為説を否定しています。
理由としては、
- ヒトに感染しやすいように十分な最適化がされていない
- 遺伝子改変した痕跡が見つけられない
というのが、主な理由です。
また、自然発生(動物のウイルスが自然変異)した説を否定できる証拠がない、としています。
結論
これらの報告からSARS-CoV-2は人為的というより、自然発生で生じた確率の方が高そうです。
追記
本記事を書いた翌日、米国からSARS-CoV-2が“not man-made” であることが正式見解として示されましたね。
無事、自然発生ということで決着がつきそうです。