健康を硬派に考える(仮)

薬剤師免許・医学博士号をもち、製薬会社への勤務経験もあるアサカワイッペイが健康に対して、真剣に考えるブログ

科学的に運命のヒトを探しにいこう

 

今年もクリスマスが終わり、新年の足音が聞こえる時期になってきました。

クリスマスは、多くのカップルや家族で街全体が浮かれていましたね。

僕も若いときは、恋人と過ごして、ウキウキしていました。

……僕も来年はキッチリと運命のヒトを探しに行きたいと思います。

 

さて、恋愛が盛り上がる時期になると、TV番組やネット記事で「運命のヒト」とか「相性の良さを確かめるには」というタイトルを目にします。

恋愛を科学的視点でとりあげると、話題に上がるのが「匂い」です。

「匂い」については、まことしやかに、以下の内容が語られています。

 

匂いと恋愛のよくある仮説

ヒトは恋に落ちるときに相手の匂い(フェロモン)を感じとります。

ヒトにより発する匂いが異なり、匂いを受けとる側も好みの匂いがあります。

恋愛で相性が良いのは、お互いが好きな匂いを発する相手と認めたときです。

 

そして、匂いの好き嫌いは、免疫(体の防御)に深く関わる分子、

  • HLA(Human Leukocyte Antigen,ヒト白血球抗原

によって決まります。

 

HLAは、ヒトそれぞれ少しずつDNA配列が異なっています。

恋愛をするときは、HLAのDNA配列(HLA型)が自分とは似ていない人を選びます。

その理由は、HLA型の違うもの同士が子供を生んだとき、その子供に遺伝したHLA型は多様性を持つことになるからです。

 

HLA型は、免疫関連の分子なので、多様性を持つと、多くのウイルスや細菌に対応できるようになります。

これは、人間という種の保存のためには極めて重要なことです。

したがって、運命の赤い糸は、実は「HLA」という分子ではないかと言われています。

 

嗅覚は本当に運命のヒトを連れてきてくれるのか

たしかに、巷で言われていることは、一定の説得力がある気がします。

 

一般的に、HLAは数万通りの多様性があり、HLA型が似た人を探す方が難しいです。

骨髄移植の際、”ドナー”が見つかりにくいことからも、それが分かります。

(移植の可・不可はHLAの適合性で決まっています。)

上の仮説では、

  • 多様性のあるHLA型が似ているのはパートナーとして不適
  • ただ、HLA型が、どう違えばいいのかは不明
  • しかし、HLA型を見分ける検知器として「匂い」がある

と言えます。

 

「HLA」と「匂い」と「運命のヒト」を学術論文で調べてみた

検索結果として、2018年に発表された文献がヒットしました。

www.ncbi.nlm.nih.gov

本文は読めていませんが、要約部分には以下の内容が書かれています。

  • HLA型の異なる複数の異性の体臭サンプルを嗅がせた
  • 男の場合は、嗅いだ体臭サンプルとHLA型に統計学的な相関がなかった
  • 女の場合は、自分とは異なるHLA型を持った体臭サンプルに好感を示した(統計学的有意)
  • ただし、女性はホルモン避妊薬を使用している女性は体臭サンプルとHLA型に統計学的有意差がなかった
  • このデータは、HLA型と体臭、さらには体臭を介して、免疫学的に優秀な子孫を残すという仮説を支持している

 

このように最新の科学でも、

「パートナー同士のHLA型が違う方が良い」

と言っていますが、どう違えば良いのかはよくわからないようです。

さらなる解析は、サンプル数を増やして実施された研究結果を待ちたいと思います。 


ところで体臭とは何なのか?

「匂いがある」ということは、人は体から揮発性の成分を発しているということです。

HLA自体は、たんぱく質なので、匂い成分になるとは考えにくいです。

では、HLAが違うことで、

  • なぜ発する匂いが違うのか?
  • なぜ匂いを受け取る側の感じ方が違うのか?

が疑問として上がってきます。

 

HLAによって発する匂いが違う理由

匂いの異なる理由を、免疫系・HLA・細菌叢の観点から、考察し、仮説を考えました。

 

人間の体内・表面には、多くの菌が常在しています。

ヒトの免疫系は、その菌たちと戦い、そして共生し、日々バランスをとっています。

HLAは、前述の通り、免疫に深いかかわりのあるタンパク質です。

HLAがヒトぞれぞれ違うのであれば、菌たちとの戦い方もちがうはずです。

 

戦い方が違えば、人間の体内・表面にいる菌の種類やバランスは、人によって異なってくるはずである。

この予測を元に論文を調べてみると…ありました。

www.ncbi.nlm.nih.gov

文献を要約すると、

「匂いはパートナー選びに影響を与えており、体臭を形成するある物質を調べたところ、体臭はHLAと皮膚細菌叢に関係があるのかもしれない」

とのことです。

複雑な気持ちですが、僕たちはパートナーの体内・表面にいる細菌の匂いにドキドキしているのかもしれません。 

 

匂いの受とり手による感じ方の違い

匂いを発する側の影響もあるが、受けとる側の感じ方が違うのは、なぜでしょうか?

これに関しても、非常に興味深い論文がありました。

www.ncbi.nlm.nih.gov

簡単に要約すると、DNAレベルの話ですが…

  • 匂いを感じる受容体はたくさんある
  • 匂いを感じる受容体群の遺伝子は、HLA(文献ではMHC)と同じ染色体上にある
  • HLA型により、それぞれの匂いを感じる受容体の発現量が違う

 

 つまり、「HLA型の違いによって、匂いの受とり手も、感じやすい匂い・感じにくい匂いがありそう」ということです。


大雑把なまとめ

ずいぶん長々と書いてしまいましたが、簡単にまとめます。

  • 女性は匂いによって男性とのHLA型を分別している
  • 女性は自分とはHLA型の異なる男性を良い匂いと感じる
  • 匂いは、ヒトの体内・表面の細菌叢によって決まっている可能性がある
  • 匂い感じる受容体の発現量は、HLA型により違いがあり、好みの匂いを選り分けている可能性がある

恋愛やパートナー選びには、いろいろな情報があふれています。

そこで、匂いを軸に科学的に恋愛を語ると、こんなストーリーを紡ぐことができます。

さて、皆さんもパートナー選びの際、匂いを1つの指標にしてはいかがでしょうか?

 

 

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