本庶先生のノーベル賞と小野薬品
2018年10月1日に本庶佑先生(京都大学教授)のノーベル賞受賞が発表されました。
僕は大学院時代に免疫学の研究をしてたため、本庶先生とお話したこともあります。
本庶先生は、抜群に頭が良いですが、皮肉屋でもあります。
記者会見やインタビューを見てもわかると思いますが、わりとキャッチーでメディア受けする言葉や内容について話をします。
その1つが、本庶先生による小野薬品への批判です。
それに対する小野薬品の反論がこちら。
のちのち書きますが、医薬品は特許が命です。
過去の特許を簡単に見ていくと、本庶先生と小野薬品の関係は、すでに1990年代前半からありそうです(google patent)。
さらに、PD-1発見の経緯は、こちらのコラムにも記載があります。
PD-1の遺伝子自体を見つけたのは石田先生(現・奈良先端科学技術大学 准教授)のようです(石田先生の当時の上司が本庶先生だった模様)。
おそらくPD-1の発見には多くの人が関わったのでしょう。
つまり、汗をかいたのは、本庶先生だけでなく、小野薬品も同様です。
そして、大事なことは、
「医薬品開発には莫大なお金がかかる」
ということです。
1つの医薬品ができるまで、スムーズに進んだと仮定して、
- お金にして50億円
- 時間にして10年
が費やされます。
そして、途中で開発中止になるものも多いのです(というか、ほとんど)。
小野薬品の過去のアニュアルレポートを見てみると2008年は、
- 売上高:1,450億円程度
- 研究開発費:390億円程度
- 純利益:350億円程度
となっています。
(これ以上、古いデータを見つけられませんでした。)
もちろん1年で50億円を投資するわけではありません。
しかし、1つの製品の開発に50億円を費やすことが、会社の財務にどれほどのインパクトをもたらすか、ご理解いただけるいただけると思います。
オプジーボの開発期間は15年と聞いているので、費用は50億円では利かないでしょう。
そういった状況での本庶先生の小野薬品へのご批判は、酷であると思います。
(ポジショントークの可能性もありますが…)
ちなみに、記事の中で
「小野薬品から本庶先生に幾ばくかのロイヤリティは支払われているようですが〜」
と記載があります。
おそらく、金額にすると年間あたり数千万〜億単位でしょう。
仮の話ですが、PD-1の発見者が製薬会社に所属する研究員(社員)だった場合、
「業界相場として1,000万円程度が報奨金として支払われる程度」
と聞いたことがあります。
(そういう優れた研究者は、出世もするので、高い給与を受けとるんでしょうが。)
さらに、yahoo newsなどのコメント欄にオプジーボの値段が高すぎる、というコメントも見かけます。
しかし、製薬会社は、稼いだお金を次の医薬品開発に投資し、新たな医薬品を作らなければ、潰れてしまうのです。
とはいえ、製薬会社・薬価制度・国家財政など、医薬品をとり巻く環境は複雑です。
そのあたりも、今後、記事にできたら、と思っています。