解き明かされる音楽の力
僕は、(元)科学者の端くれとして、なるべくサイエンスの情報をインプットしたいと思っています。
日本では、ちゃんとしたサイエンス系の情報をTVでとりあげることが少ないように感じますが、サイエンスゼロという番組は観ています(毎週日曜 Eテレ 23:30-24:00)。
2017年までは南沢奈央さん、2018年からは小島瑠璃子さんがアシスタントとして出演しています。
親しみやすさと真面目さを合わせた良いコンテンツだと思います。
そんなサイエンスゼロですが、12月9日に放送の「解き明かされる音楽の力」が興味深かったです。
ザックリまとめ
番組の切り口は、脳にダメージを受けた方が話せなくなってしまった(失語症)が、音楽に合わせて話す練習をしたら、言語機能が回復したという話です。
そこから、健常人に対する音楽の効果へ話が展開され、音楽を聴きながら運動すると認知機能の向上に役立つことが示されます。
失語症の方も健常人も、音楽を聴きながら話したり運動することで、ただ話す・ただ運動するより、脳が広く活性化するため、能力が向上しやすいということです。
さらに、最近の研究では、音楽を聴かせた時のそれぞれの人と脳波を測定し、AIを使って最も対象者が快適に感じる音楽を作れるようになってきているようです。
(まだプロトタイプのようですが。)
失語症とメロディックイントネーションセラピー
失語症とは、何らかの原因(脳梗塞など)で脳の言語を司る部分(言語野)がダメージを受け、うまく話ができなくなる疾患です。
番組内では、紹介されたエピソードは、米国の元議員が銃撃され、一命をとりとめたものの、銃撃により言語野が損傷され、失語症に陥ってしまうという話でした。
しかし、音楽を取り入れて話す練習をすることで、2年後にはスピーチができるまでに回復していました。
音楽を取り入れ、話す練習をすることを専門用語で「メロディックイントネーションセラピー」といいます。
メロディックイントネーションセラピーは、現在、日本でも実施されているようです。
ちなみに、失語症から回復すると、画像診断的にも明確な違いが現れます。
脳内の言語を発する役目を担う部分(ブローカ野)と言語を理解する(ウェルニッケ野)をつなぐ弓状束をという神経が太くなり、回復を裏付けています。
音楽と健常人の認知機能
65歳以上の人を対象にした研究で、一定期間、
「音楽を聴きながら運動したグループ」「音楽なしで運動したグループ」
を比較し、その後の認知機能を調べるという実験をおこないました。
その結果、「音楽なしで運動したグループ」より「音楽を聴きながら運動したグループ」の方が、認知機能が向上したという結果が出ました。
おそらく原著の文献はこちらだと思います。
好きな音楽と快適に感じる音楽は一致しない
5種類の音楽を被験者に聞かせ、脳波を測定します。
脳波の結果からAIが最も被験者が快適に感じる音楽を作り出すという試みです。
その結果、必ずしも被験者が好きな音楽とAIが作った音楽のジャンル(?)が一致しませんでした。
しかし、被験者はAIが作った音楽を心地よいと感じたようです。
つまり、好きな音楽と快適に感じる音楽は異なることが示唆されました。
(僕の私見では、好きな音楽を被験者が必ずしも快適と思っているわけではなく、気持ちが高ぶってくるから好き、等の他の理由もありそうですが…)
以上のような内容でした。
こちらのサイトからオンデマンドで見られるようなので、ご興味のある方は是非!