健康を硬派に考える(仮)

薬剤師免許・医学博士号をもち、製薬会社への勤務経験もあるアサカワイッペイが健康に対して、真剣に考えるブログ

医療用医薬品の臨床試験

 

医療用医薬品が発売されるまでの開発プロセスは、

  • 10年間
  • 50億円

かかる、と書きながら、4記事でそのプロセスを紹介する強引さをお許しください。

 

開発段階の医薬品(シーズ)について、一定の品質が担保され、非臨床試験(動物試験)で安全性が確認されたら、ヒトへの投与になります。

ヒトへ投与する試験を通称・臨床試験とよびます。

臨床試験は、大きく分けて4段階にわけられます。

  • 第1相試験(Phase1)
  • 初期第2相試験(Phase2a)
  • 後期第2相試験(Phase2b)
  • 第3相試験(Phase3)

もちろん、こちらも実施にあたり国(厚労省)からガイドラインが出ています。

www.pmda.go.jp

このPhase1〜3について、どのような考え方で、何をするのでしょうか?

 

Phase1について

Phase1は、一般的に健常な成人男性に投与し、安全性をみる試験です。

健常人は、他の医薬品を服用している可能性が低く、投与後の体内でのシーズの動き(血中濃度代謝など)を観察しやすいためです。

男性に投与するのは、女性の妊娠・生殖機能/卵細胞への影響を考慮するためです。

男性の生殖機能/精巣はいいのか?という問題はありますが、消去法的に男性が選ばれたものと推察します。

(精巣への影響がどれほど検討されたか不明です。精子自体は製造と放出が繰り返すので、一定の理屈は立ちそうです。)

 

ちなみに、Phase1から患者に投与することもあります。

個々のシーズの性質や標的疾患によって異なり、例えば抗がん剤は毒性が強いことが多いので、最初から患者に投与することが多いです。

 

Phase2aとPhase2bについて 

Phase2aとPhase2bは、通称・探索的臨床試験とよばれます。

Phase2aとPhase2bの違いは、投与人数と投与量になります。

Phase2aは、少人数の患者に投与し、安全性と有効性を観察します。

試験の目的は、安全性の確認という観点が強く、有効性は”兆し”が見えるか、というレベル感です。

 

Phase2bは、Phase2aより多くの患者に投与します。

安全性はPhase1〜2aで確認できているので、Phase2bは有効性発揮するのに最も適した投与量を探りにます。

例えば、

  • A群:1 mg
  • B群:3 mg
  • C群:9 mg
  • D群:既存薬 or 偽薬(シーズや既存薬は未投与)

という感じで投与します。

ここで、今後の投与量を決めます。

 

Phase3について

Phase3は、通称・検証試験とよばれます。

Phase1〜2bで得られた安全性と有効性を多人数の患者で証明します。

多くの場合は、

  • A群:シーズを投与(投与量はPhase2bで決めた最適量)
  • B群:既存薬 or 偽薬(シーズや既存薬は未投与)

という感じで投与します。

Phase3実施前には、国(厚労省)と相談し、

  • 実施計画に問題がないか
  • 有効性を測る指標/期間は適切か

など綿密に打合せます。

 

 

ヒトにおいては、4段階(Phase1〜3)を経て、安全性と有効性は確かめられます。

時間/費用については、臨床試験の対象となる疾患毎に大きく分かれます。

しかし、最も多くの患者に参加してもらうPhase3は、期間が1年以上、費用にして数十億円がかかるのが一般的なのです。

 

 

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