医療用医薬品と動物を使った実験(非臨床試験)
医療用医薬品(お薬)の種ができると、まずは動物を使用した試験を行います。
お薬の種は、業界用語で通称・シーズと呼ばれます。
また、動物試験のことを通称・非臨床試験と呼びます。
(臨床=現場/患者の側、という意味なので動物試験は、非臨床なのです。)
シーズができると、動物に投与することで安全性(と有効性)を確かめます。
なぜ有効性を()でくくったのか?
動物試験では圧倒的に安全性の試験項目が多く、重視されるからです。
試験の項目名を見るだけで、まず安全性が気にされてていることがわかります。
では、なぜ非臨床試験では有効性より安全性なのか?
理由は、動物試験で副作用がでるシーズは、たいていヒトでも副作用がでるからです。
動物での安全性試験は、複数種(マウス・ラット・イヌ・サルなど)で実施します。
そして、同じ内容の試験を何度か繰り返します。
結果、同じ副作用が複数種で出たら、やはりヒトでも副作用が出てしまうんです。
一方、有効性は少し違います。
有効性を確かめるには、ヒトの病態に似たモデル動物を作らなければなりません。
例えば、アトピー性皮膚炎のモデルマウスを作ります。
そのマウスにシーズを投与して、アトピー性皮膚炎の症状が回復したとします。
しかし、医薬品開発ではヒトのアトピー性皮膚炎で有効性を示すかは不明と考えます。
それは、モデルマウスがヒトのアトピー性皮膚炎を完全に反映しているかは絶対にわからないからです。
これは皮肉な話ですが…
癌を対象に開発が進められていた開発品がヒトに投与され始めてから失敗すると、癌の動物実験をしている研究者は、
「動物の癌を治せる薬はいっぱいあるのになぁ。」
とボヤいたりします。
したがって動物試験では、有効性をより安全性を重視した試験が行われます。
ちなみに、非臨床試験の項目を実施すると、5〜10億円の費用がかかると言われます。
最終的に製品になるかわからないものに、初期投資として、数億円を費やす(費やさねばならない)のがお薬の研究開発なのです。